後編では、各ミネラルの働きと、過剰・不足の際の主だったリスクをまとめています。
各ミネラルの働きと過不足
ナトリウム
働き 血液などの酸―アルカリのバランス調整、細胞内外の浸透圧バランスの調整、細胞のエネルギー代謝や神経伝達にも関与、水分バランスの制御など
過剰 高血圧など
不足 脱毛、下痢、発育障害、情動不安、心拍数の増加、飲水量の減少および尿量の増加など
カリウム
働き 細胞の正常化、神経刺激の伝達やエネルギー代謝、心機能に関与など
過剰 心臓疾患・副腎疾患など
不足 低カリウム血症、脱水症状、発育障害など
カルシウム
働き 骨格形成、細胞間の情報伝達および神経刺激の伝達に関与など
過剰 シュウ酸カルシウム結石、鉄・リン・亜鉛などの吸収阻害、発育障害など
不足 シュウ酸カルシウム結石、骨折・足の変形、神経過敏、腸内環境の異常など
リン
働き 骨格形成、DNAおよびRNAや、細胞膜のリン脂質などに関与など
過剰 カルシウムの吸収阻害など
不足 カルシウム吸収阻害、骨の軟化や変形、食欲不振、成長遅延など
マグネシウム
働き 骨と歯の構成物質、エネルギー代謝全般、心臓における神経伝達や筋肉収縮など
過剰 ストルバイト結石、神経障害、皮膚障害、発育障害など
不足 関節の過伸展、神経障害、高血圧および食欲低下、筋肉虚弱など
塩素(塩化物)
働き 胃酸形成、タンパク質の消化、体液の浸透圧調整、血液や腸内環境のpH調整など
過剰 血液中のカルシウムおよびカリウム濃度の異常など
不足 虚弱、成長遅延、カリウム欠乏症など
マンガン
働き 細胞内のミトコンドリアを正常化、関節軟骨の形成および神経機能に関与など
過剰 鉄分欠乏による貧血など
不足 繁殖機能に影響、関節の形成不全など
鉄
働き ヘモグロビンおよびミオグロビンの重要な構成要素で赤血球に関与、補酵素機能など
過剰 マンガン・銅および亜鉛の欠乏れ、嘔吐、下痢など
不足 発育不良、貧血、抵抗力の低下、下痢、貧血、食欲不振など
銅
働き メラニンの合成に関与、鉄分の働きに関与、消化系で銅・亜鉛・鉄の吸収は相互依存的である(鉄もしくは亜鉛の量が過剰であれば銅の利用率が減少する)など
過剰 肝臓に銅の蓄積を生じやすい犬種あるいは胆汁鬱滞などの場合、肝臓に過剰に蓄積し毒性を発する事があるなど
不足 貧血、骨の変性、毛艶悪化、被毛の色素抜け、発育障害など
亜鉛
働き 代謝および酵素機能に関与、ビタミンAを運搬、肝臓における尿素回路および中枢神経系の神経伝達など
過剰 特に猫では過剰症が報告されているなど
不足 脱毛、皮膚障害、発育障害、育不良など
ヨウ素
働き 甲状腺ホルモンや細胞の活動、エネルギー代謝に関与など
過剰 猫ではサイロキシン(甲状腺ホルモン)の減少など
不足 脱毛、骨の形成異常、甲状腺肥大など
セレン
働き ビタミンEと協調する抗酸化成分、細胞膜の保護、活性酸素による細胞損傷を抑制に関与など
過剰 食欲不振、体重増加抑制など
不足 食欲不振、呼吸困難など
このように、それぞれの「ミネラル」が重要な働きをしており生命維持には欠かせない栄養素になっている他、「ビタミン」と異なり、過剰と不足が表裏一体になっている「ミネラル」も見られます。
この他にも「ホウ素」や「クロム」など「AAFCO」では設定されていないものの、ごく微量でも重要な働きをする「ミネラル」もあります。
「ミネラル」に関しては「ビタミン」以上にバランスが難しいため、手作り食やサプリメントを用いる際は、より過剰症や欠乏症への注意が必要となります。
Writing by shin.k